動的光散乱装置 (DLS)
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装置概要
機種 | DLS-7000 (大塚電子社製) |
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設置場所 | 駿河台校舎2号館 地下1階 2010号室 |
設置年度 | 平成13年度 |
仕様 | 光源 He-Ne レーザー 10mW 検出器 フォトンカウンティング用光電子増倍管 コリレータ タイムインターバル法,タイムドメイン法. 最大4096チャンネル. ゲートタイム 5, 10, 20, 40, 80, 160, 320,640 msec ゴニオメータ 5~160°, 精度 ± 1° 使用温度範囲 5~160℃ |
性能 |
【動的光散乱法】 【静的光散乱法】 |
原理と概要
動的光散乱法
試料にレーザーを照射し,散乱光を測定しその時間変化の分析を行うことで並進拡散,回転拡散,分子内運動,濃度揺らぎ,分子配向秩序揺らぎなどを知ることができます.これらの現象は,測定対象とする試料により流体力学的半径,鎖の広がり,網目のサイズ,ミセルの形状などの知見に対応しています.
散乱光の時間変化は,試料溶液中の粒子サイズの大きさによってブラウン運動による拡散運動の速さが異なることに対応しています.散乱光強度の時間変化から相関関数を算出し,相関関数から求められる緩和時間よりブラウン運動の速さを求めることができます.小さな粒子では,運動が速ので散乱光強度の揺らぎも速く,一方,大きな粒子では運動が遅いので散乱光強度の揺らぎも遅くなります.そのため,緩和時間は前者では短く,後者では長くなります.
光電子増倍管で検出される散乱光は,離散したパルス信号として出力されます.この信号をコリ
レータに入れることで,散乱光の自己相関関数を計算します.散乱強度ー時間相関関数g(2)(τ)(規格化された2 次相関関数)は,
g(2)(τ ) =1+ β | g(1)(τ) |2
で示されます.τは相関時間,βは定数,g(1)(τ ) は規格化された1 次相関関数です.このg(1)(τ ) は,球形の粒子の場合には,
g(1)(τ ) = exp(-Γt)
と表すことができます.ここで,
Γ = q2D
ですので, g(1)(τ ) は
g(1)(τ ) = exp(-q2Dτ )
と書き直すことができます.ここで,q = (4Π /Λ)sin(Θ /2) で,
D は並進拡散係数,n は溶媒の屈折率,Λはレーザーの波長,Θは散乱角です.
測定で得られるg(2)(τ )と上記のg(2)(τ )およびg(1)(τ ) から並進拡散係数D を求めることができます.このD は,粒子径を反映していることは言うまでもありません.
粒子径に分布がある場合のg(1)(τ ) は,減衰時間Γの分布式として
g(1)(τ ) =∫∞0 G(Γ)exp(-Γτ )dΓ
で表します.このg(1)(τ )を求めるために,キュムラント法,ヒストグラム法およびマルカート法が用いられています.
静的光散乱法
試料にレーザーを入射して,入射光に対しθの方向に散乱される光の強度を光電子増倍管で測定します.観測される散乱光強度は,散乱体によるブラウン運動のためわずかに揺らいでいますが,静的光散乱法では時間平均量を議論します.
時間平均された散乱強度Iθ ,入射強度I0,試料と検出器の間の距離r ,検出器が見込む散乱体積Vθの間には,
という関係があります.Rθ をレーリー比といい,静的光散乱法で最も基本的な量となります.
レーリー比が既知の標準物質を利用し,試料のレーリー比を決定することができます.希薄溶液の場合,レーリー比は
と表すことができます.ここで,Mwは重量平均分子量, < S2 >は回転半径, A2は第2 ビリアル係数,$c$は溶液の濃度,qは散乱ベクトルの大きさq = (4π /λ)sin(θ /2) でλはレーザー光の波長,θ$\theta散乱角です.また,Kは光学定数で
で表されます.ここで,NAはアボガドロ数, nは溶液の屈折率,λ はレーザー光の波長, dn /dcは濃度に対する屈折率の増分です.dn /dcを求めることで,光学定数を決定することができます.そのためには,示差屈折計を用います.
実験的にMw,< S2 >およびA2を求めるためには,縦軸にKc /Rθ ,横軸にsin2θ + kc ( k は定数)としてZimm プロットを行うことで求められます.
測定
- 測定はライセンス所有者(ランセンサー)が行って下さい.
- ライセンサー以外の使用は認めません.
- 不明な点は動的光散乱装置(DLS)担当者にお尋ね下さい.
申し込み
1. | 材料創造研究センターにある月別予約表で確認し,予約(研究室名と利用者名)を記入して下さい.また,キャンセルする場合には,わかりしだい消して下さい.なお,利用予定日に不慮のトラブル等により装置利用ができない場合もあります. |
2. | 使用時間は1時間を1単位とします. |
使用方法
1. | 測定に必要な用具,溶剤は利用者が用意して下さい. |
2. | 使用開始前に計測機器及び付属装置の部品を点検してから使用して下さい. |
3. | 測定室利用中はライセンサーが責任を持って同室の管理をし,整理整頓に心掛け清潔を維持して下さい. |
4. | 装置の不備や故障,消耗品が残り少ないなどの場合は,必ずDLS装置担当者に報告して下さい. |
5. | 測定終了後,装置使用報告書に必要事項を記入し当センターに提出して下さい.装置使用報告書は当センターにあります.また,材料創造研究センターホームページからダウンロードできます. |