電子スピン共鳴装置 (ESR)

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装置概要

ESR[1].gif

機種 日本電子JES-RE2X型電子スピン共鳴装置
[ JEOL JES-RE2X Electron Spin Resonance Spectrometer ]
設置場所 駿河台校舎2号館 地下1階 209A号室
設置年度 平成2年度
温度範囲 -170~199℃
(オプションにより200~600℃)

 

 

ESR の原理と測定対象物

電子スピン共鳴(ESR)測定とは原子,分子軌道に2 個入るべき電子が1 個しか入っていない状態の不対電子を測定することで,遷移金属イオンやラジカルなどを測定することが可能となる.このため,以下の表に述べるような半導体,金属,希土類元素,触媒,高分子材料,酵素,石油・石炭などの分野での利用が可能であることが報告されている.さらに,本来不対電子をもたない物質においても,標準装備の紫外線照射装置を用いることによりラジカル(不対電子)を生成させ測定することも可能である.

表 ESR 測定の対象物

磁性体 YIG,磁気バブル記憶素子,光変換素子
金属 アルカリ金属,Cu,Al
半導体 グラファイト,カーボンファイバー,Si,Ge,GaAs,a-Si(ダングリングボンド)
カラーセンター アルカリハライド結晶,石英
気相のフリーラジカル H,N,O2,NO,他
錯体,無機化合物 Ti3+,VO2+,Mn2+,Fe3+,Co2+,Cu2+,Gd3+
高分子化合物 MMA,酢酸ビニル,等
有機ラジカル DPPH,TANOL,スピンラベル剤,スピンプローブ剤
有機金属 TTF 塩,TCNQ 塩
金属酵素,蛋白,血液 HRP,ヘモグロビン,フェレドキシン
ビタミン,補酵素 ビタミンC,E,K,NADPH
血液成分,組織,食品 メラミン,過酸化脂質,膜
化石,岩石 歯,骨,貝がら,サンゴ,石英の年代測定
石炭,石油 石炭の風化,石油の変性
宝石 宝石(ダイヤモンド,ルビー,真珠)の品質検査
炎,燃焼ガス ガス検査,溶存ガス,燃焼機構

 

 

ESR で測定するための試料の準備

fig20[1].gif当センター所有のESR 装置の試料管は5mmφ(長さ270mm)を使用する.粉体サンプルの場合はそのまま試料管に底から43mm 程度の高さとなるように導入することで測定が可能である.バルク試料の場合には試料管にサンプルが入るように適宜粉砕処理を行う.液体試料では粉末試料同様に43mm(約0.09ml)注入し,1~0.1mmHg となるように脱気した後,封管してから測定する.

 

 

ESR 測定の実例

前述のとおりESR 測定はきわめて広い分野で活用できるため,一般的な実例をあげるのは難しいが,一例として熱ルミネッセンス蛍光体の母体結晶として知られるβ型リン酸三カルシウム(β-Ca3(PO4)2)の構造解析をESR 測定装置(JES-RE2X 型)にて測定した結果を示す.その結果,非晶質リン酸カルシウムを1100℃で焼成して合成したβ型リン酸三カルシウム中には化学分析では検出できないきわめて微量の水素原子が存在しており,さらにその水素原子は2 つのPO43-四面体構造にはさまれた形で存在していることが確認できた.さらに,その熱ルミネッセンスメカニズムとしては,この水素原子がトラップになっていることをESRより解明した.

fig19[1].gif
引用データ
1. 大谷博昭,山内 淳,
「電子スピン共鳴 素材のミクロキャラクタリゼーション」,
講談社サイエンティフィク,p.7(1989).
2. K.Nakashima,J.Yamauchi,
“ESR Investigation of a Stable Trapped Hydrogen Atom in X-ray-Irradiated β-Tricalcium Phosphate at Room Temperature”,
J.Am.Chem.Soc.,127,1606-1607(2005).
3. K.Nakashima,M.Takami,M.Ohta,T.Yasue,J.Yamauchi,
“ Thermoluminescence mechanism of dysprosium-doped β-tricalcium phosphate phosphor”,
J.Luminescence,111,113-120(2005).

 

 

測定

  • 測定はライセンス所有者(ライセンサー)が行って下さい.
  • ライセンサー以外の使用は認めません.
  • 不明な点は電子スピン共鳴装置(ESR)担当者にお尋ね下さい.

 

 

申し込み

1. 材料創造研究センターにある月別予約表で確認し,予約(研究室名と利用者名)を記入して下さい.また,キャンセルする場合には,わかりしだい消して下さい.なお,利用予定日に不慮のトラブル等により装置利用ができない場合もあります.
2. 使用時間は3時間を1単位とします.

 

 

試料作成について

1. 試料管は5mmφ(長さ270mm)のものを使用して下さい.
2. 試料は試料管の底に約43mm(約0.09ml)入れて下さい.
  • 固体及び粉体の場合は封管せずに測定できますが,キャビティ内を汚染する恐れがあるときは少し脱気して封管して下さい.
  • 液体の場合は脱気(約1mmHg~10-1mmHg)して封管して下さい.
3. 溶液試料の場合は溶液用セルを用いて,溶媒中の溶存酸素を脱気(10-3mmHg)して下さい.
4. 水溶液セル,電解セル等の使用は各自でセルを用意して下さい.
5. その他についてはESR 装置担当者に相談して下さい.

 

 

使用方法

1. 通常測定,高温測定の目的に応じ,各々専用のキャビティに交換して下さい.取り外し,取り付けは慎重かつ丁寧に行って下さい.
2. 測定に必要な用具,溶剤は利用者が用意して下さい.
3. 使用開始前に計測機器及び付属装置の部品を点検してから使用して下さい.
4. 測定希望データについて

通常測定

  • 測定温度は-170℃~+199℃で測定ができます.
  • 窒素ガスをキャビティに流して下さい(N2 2L/min).
  • 低温度での測定の場合は液体窒素を用意して下さい.デジタルマーカ(ES-DMI, Mn2 マーカ)により,ラジカルの定量再現性,磁場精度,g 値精度の向上に使用できます.

高温測定

高温(200~600℃)で測定できます.窒素ガスをキャビティに流します(N22L/min)ので,窒素ボンベを2本用意して下さい.高温における試料の熱的挙動解析に利用できます.

CPU データ

シミュレーション解析による等方性(左右対称形),異方性(左右非対称)の同定,帰属等が行えます.

5. キャビティ内には不純物,ゴミ等入れないように細心の注意を払って下さい.
6. 測定室利用中はライセンサーが責任を持って同室の管理をし,整理整頓に心掛け清潔を維持して下さい.利用目的以外に測定機器をみだりにいじらないで下さい.
7. 測定終了後は,計測機器及び付属装置の部品を清掃し,収納箱に元通りに格納して下さい.装置にセットされているキャビティには必ずキャップをして下さい.
8. 装置の不備や故障,消耗品(ガス,プリンター用紙など)が残り少ないなどの場合は必ずESR 装置担当者に報告して下さい.
9. 測定終了後,装置使用報告書に必要事項を記入し,当センターに提出して下さい.装置使用報告書は当センターにあります.また,材料創造研究センターホームページからダウンロードできます.