フーリエ変換核磁気共鳴装置 (FT-NMR)
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装置概要
機種 | 日本電子JNM-ECX400型フーリエ変換核磁気共鳴装置 [ JEOL Model JNM-ECX400 Fourier-Transform Nuclear Magnetic Resonance System ] |
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設置場所 | 駿河台校舎2号館 地下1階 209A号室 |
設置年度 | 平成20年度 |
特徴 | 本装置は約9.39テスラの強力超伝導磁石を備え,水素(1H)と炭素(13C)のNMRが測定できる.1H の共鳴周波数は約400MHz,13C は約100MHz である. |
機種 | 日本電子JNM-ECZ500R/S1型フーリエ変換核磁気共鳴装置 [ JEOL Model JNM-ECZ500R/S1 Fourier-Transform Nuclear Magnetic Resonance System ] |
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設置場所 | 駿河台校舎2号館 地下1階 209A号室 |
設置年度 | 令和元年度 |
特徴 | 本装置は約11.74テスラの強力超伝導磁石を備え,水素(1H)や炭素(13C)等のNMRが測定できる.1H の共鳴周波数は約500MHz,13C は約125MHz である. |
原理と概要
核磁気共鳴装置(NMR)は有機化合物中の水素や炭素の原子の状態を調べるための装置であり,化合物の構造を決定するために非常に有用である.水素などの原子核を強い磁場の中に置いて電磁波を照射すると,ある特定の周波数の電磁波のみを吸収する核磁気共鳴という現象が観測される.この吸収される電磁波の周波数(共鳴周波数)は原子の状態(他のどんな原子と結合しているかなど)によってわずかに異なるため,どの周波数の電磁波が吸収されたかを調べることで,化合物中にどのような種類の水素や炭素が何種類あるかなどを知ることができる.
たとえばメタノールについて水素のNMR を測定すると,メタノールにはメチル基とヒドロキシル基の2種類の水素が存在するので,2本の吸収シグナルが現れる(下図).
1H-NMR
水素は多くの有機化合物に含まれるため,この情報を得ることは化合物の構造決定に非常に有用である.1H-NMR には以下の特徴がある.
- シグナルは近くの他の水素の影響で分裂する
- シグナル同士の面積の比はそのまま化合物中の水素原子の数に対応する
13C-NMR
有機化合物の骨格は炭素であるから,炭素のNMR は化合物の骨格そのものの情報を与える.しかしNMRが測定できる炭素原子核は,12C 中に1%程度含まれる13C のみであるため,測定には高濃度の試料と長時間を要する.
- シグナルは1H-NMR のようには分裂せず,化合物中の炭素と同数のシグナルが現れる
- シグナルの面積の比は化合物中の炭素の数とは対応しない
測定例
図1と図2はそれぞれ酢酸ビニルおよびアクリル酸メチルの1H-NMR スペクトルである.これらはエステル基の向きが異なるだけの異性体の関係にあるが,シグナルは明らかに異なる位置に現れ,この2つを容易に区別することができる.
また図3はペニシリンの1H-NMR スペクトルであるが,このような複雑な構造の化合物であってもそれぞれの水素のシグナルは明確に分離する.
コレステロールほど多くの水素を持つ化合物になると,図4に示すように多くのシグナルは複雑に分裂し重なって現れるが,13C-NMR スペクトルを測定すれば(図5),27 種類の炭素の多くは分離して観測され,構造について豊富な情報を与える.
測定
測定はライセンス制とオペレータ制を導入しています(ECZ500R型はオペレータ制のみ).不明な点はFT-NMR装置担当者におたずね下さい.
申し込み
1. | ライセンス制の場合は,材料創造研究センターにある月別予約表で確認し,予約(研究室名と利用者名)を記入して下さい.また,キャンセルする場合には,わかりしだい消して下さい.なお,利用予定日に不慮のトラブル等により装置利用ができない場合もあります. |
2. | ライセンス制の使用時間は,10分を1単位とします. |
3. | オペレータ制の測定は,1件(積算5時間まで)とします. |
【オペレータ制の申込】
試料名 | 英数字で記入して下さい. |
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構造式 | 測定範囲を決める参考となりますので必ず記入して下さい.未知試料の場合はその旨を記入して下さい. |
分子量・試料量 | 測定時間に影響するため必ず記入して下さい. |
溶媒 | 溶媒はNMR Lock のため重水素化物が必要です. |
基準物質 | TMS、HMDS等の名前を必ず記入して下さい.また,重水素化物を基準とすることもできます. |
取扱い上の注意 | 必ず記入して下さい. |
測定温度 | 温度可変範囲は-100℃~+180℃です.通常は室温(22℃)で測定します.低温での測定の場合は,当センターが液体窒素を用意します. |
特記事項 | 試料を精製する際の抽出溶媒や,再結晶の際の溶媒を必ず記入して下さい. |
希望事項 | USB メモリーなどへの測定データの保存がありましたら記入して下さい. |
※ 測定範囲は特に希望のない限り13C:200ppm, 1H:15ppm です.
測定について
測定核 | 1H, 13C 等 |
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試料管 | 5mm 管 |
試料液量 | 試料管の底から4.0cm±2mm が標準です. |
※ 測定データの保存を希望する場合は,データ記録媒体(ウィルスチェック済みUSB メモリーなど)をお持ち下さい.
試料作成について
1. | 試料管は5mmφの良質で歪のないものを使用して下さい. |
2. | 試料管はきれいによく洗いよく乾燥させてから使用して下さい. |
3. | 溶媒は重水素化溶媒を使用して下さい. |
4. | 試料はよく乾燥してから調製して下さい. |
5. | 試料は均一な適正濃度の溶液にして下さい. <適正濃度> 1D の場合 1H; 10mg/ml, 13C; 100mg/ml 2D の場合 10~100mg/ml |
6. | 基準物質(TMS, HMDS, 等)を入れて下さい. |
7. | 不純物(ゴミ)や固形物(溶け残った試料等)を取り除いて下さい. |
8. | 試料名,氏名を書いたラベルを試料管に貼って下さい(測定中は,はがしますのではがしやすいように貼って下さい). |
9. | その他、試料の調製の際に次の点に注意して下さい. |
・水分(溶媒中,試料中の水分混入)
・実験者の手の油がサンプリング時に混入
・洗剤(クレンザー)等試料管の汚れ
・真空グリース脱気、試料精製時の混入
・サンプルを倒すことによるキャップ(ポリエチレンキャップ)からの抽出物質
テフロンキャップをお奨めします
テフロンキャップをお奨めします
・その他重水素化溶媒そのものに不純物を含むことがあります.
(TLC 展開した微量試料ではパラフィンのピークが強く出ることがあります)
(TLC 展開した微量試料ではパラフィンのピークが強く出ることがあります)