高速液体クロマトグラフ質量分析装置 (LC/MS)

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装置概要

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機種 ⅰ)アジレントテクノロジーズ製LC/MSD TOF 1100 システム
  [Agilent 1100 LC/MSD TOF System]
ⅱ)アジレントテクノロジーズ製キャピラリー電気泳動装置
  [Agilent Capillary Electrophoresis System]
設置場所 駿河台校舎2号館 地下1階 209A号室
設置年度 平成16年度
特徴 高分解能質量分析が可能

 

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機種 ⅰ)島津高速液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS-IT-TOF)
  [SHIMADZU LIQUID CHROMATOGRAPH ION-TRAP TIME-OF-FLIGHT MASS SPECTROMETER]
ⅱ)ベックマン コールター製キャピラリー電気泳動装置
  [BECKMAN COULTER Capillary Electrophoresis System]
設置場所 駿河台校舎2号館 地下1階 209A号室
設置年度 平成30年度設置
特徴 高分解能精密質量分析,高速/高精度 MSnが可能

 

 

原理と概要

原子や分子のレベルで質量をはかる装置が質量分析装置である.マススペクトロメトリーでは,原子,分子,クラスターなどの粒子を気体状のイオンにして真空中で運動させ,それらイオンを質量電荷比(m/z)に応じて分離・検出する.単一成分の試料のマススペクトルを解析すると,次の三つの基本的な情報が得られる.

  1. 分子量関連イオンから分子量の情報(分子量情報)
  2. フラグメントイオンから分子の構造(構造情報)
  3. 同位体イオンの高さとパターンから構成元素の種類と数(元素情報)

 

本装置で用いる事が出来るイオン化法は次の2種類で,それぞれ特徴があり,自分の測定したい化合物の性質によってイオン化法を使い分ける必要がある.

1.エレクトロスプレーイオン化(ESI)

電気伝導性の液体を細管に通し高電圧を印加すると,帯電した均一で微細な液滴として噴霧され,それらの液滴から溶媒を蒸発させることによって試料分子の多価イオンが生成するという原理に基づいている.分子量が10 万程度以下の全分子量領域で測定が可能であり,生体関連物質や難揮発性の試料に有効である.プロトンやナトリウムイオンが複数付加した正の多価イオンやプロトンを放出した負の多価イオンを生成するのが特徴.

2.大気圧化学イオン化(APCI)

液体クロマトグラフなどのキャピラリー先端から流出する試料溶液を加熱噴霧し,針電極によるコロナ放電を使いイオン分子反応を起こさせ,試料イオン(主にプロトン化分子[M+H]+)を生成させる手法.ESI に比べて比較的低極性の化合物に適用可能だが,多価イオンを生成しにくいため実用上のイオン化可能な分子量範囲は1000 程度が目安である.

 

 

試料

マススペクトロメトリーは微量分析法であるため,一般にナノモル(10-9mol)からピコモル(10-12mol)の試料量があれば分子量情報や構造情報が得られる.試料は溶媒(LC の移動相)に溶かすので,溶媒に溶けない化合物の測定は出来ない.マススペクトロメトリーでは,試料中の一個一個の原子や分子をイオンに して気相中へ取り出して分析するため,気化やイオン化に与える試料の質が分析の成否を決める.試料量が十分あっても,質の悪い試料からは質の悪いスペクトルしか得られないのがマススペクトロメトリーの特徴である.

 

 

LC/MS の測定例

例としてCalendulaglycoside B butyl ester(分子量1012,分子式C52H84O19)の質量スペクトルを示した.マススペクトルの横軸は,生成したイオンの質量数m をそのイオンの電荷数zで割った値,すなわち質量電荷比m/z を表している.縦軸は,イオン化室で生成したイオンの量あるいは数を表している.生成したイオンの存在割合は相対存在量(%)で表示する.

試料化合物の分子量情報の獲得に直接役立つイオンのことを分子量関連イオンと言い,通常、マススペクトルの最も高質量側に出現するピーク群を指す.下の図ではm/z 1035.5491 にあるピークが分子量関連イオンで,ナトリウム付加分子が検出されている.

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12C=12.0000000Da とすると,各元素の質量は整数ではなく次のような値を持つ.

1H = 1.00782503, 14N = 14.0030740, 16O = 15.9949146, 35Cl = 34.9688527

従って,例えば同じ整数質量28を持つCO(27.9949),N2 (28.0062),C2H4 ( 28.0313)でも実際には精密質量が異なるため,これらを区別する事が出来る.つまり,高分解能質量分析を行えば,正確な分子量から分子の元素組成(分子式)を知る事が出来る.ここで測定したm/z 1035.5491 はC52H84O19Na の分子式に一致すると計算される.

 

 

測定

  • 測定はライセンス所得者(ライセンサー)が行ってください.
  • ライセンサー以外の使用は認めません.
  • 不明な点は装置担当者にお尋ねください.

 

 

申し込み

1. 材料創造研究センターにある月別予約表で確認し,予約(研究室名と利用者名)を記入して下さい.また,キャンセルする場合には,わかりしだい消して下さい.なお,利用予定日に不慮のトラブル等により装置利用ができない場合もあります.
2. 使用期間は3時間を1 単位とします.

 

 

使用方法

ⅰ)LC/MSD TOF

1. 分離カラム、移動相溶媒,バイアルびん等測定に必要な器具や試薬類は申込者が用意してください.マイクロシリンジは装置備え付けのものを使用してください.
2. 本装置は基本的には逆相系溶媒(水-メタノール-アセトニトリル系など)にて使用してください.順相系溶媒の使用はご相談下さい.緩衝液は揮発性のもののみ使用できます.
3. 使用開始前に装置および附属装置の点検をしてください.また,終了後は,使用開始前の状態に戻すようにしてください(原状回復義務).
4. 装置は通常連続運転していますが,停止している場合は始動して測定可能な状態になるまで数日間必要となります.
5. 試料はあらかじめ精製,誘導体化などを行い,試料の分解,重合等による装置の汚れを最小限に抑えてください.また,必ずフィルターを通し,細かいゴミを取り除いてください.
6. 測定データはハードディスクに各自のフォルダを作成し,必ずその中に保存してください.個人フォルダ以外の場所にあるデータは消去することがあります.また,不測のトラブルによりデータが消失する可能性がありますので,重要なデータは必ずバックアップをとってください.データの消失につきましては,装置担当者および当センターでは一切責任を負いません.
7. 測定室利用中は,ライセンサーが責任を持って同室の管理をしてください.測定室での飲食,喫煙は厳禁です.また,ゴミはゴミ箱に捨て,測定後の試料やミスプリントは持ち帰ってください.
8. 測定終了後は必ずイオン源の洗浄を行ってください.
9. 装置の不調,故障などの場合は必ず装置担当者に報告してください.用紙などの消耗品が残り少ない場合にも管理者に報告してください.
10. 測定開始時刻,終了時刻など必要事項を専用ノートに必ず記入してください.測定終了後は,装置使用報告書に必要事項を記入の上,当センターに提出してください.装置使用報告書は当センターにあります.また,材料創造研究センターホームページからダウンロードできます.なお,測定をキャンセルする場合には,ただちに予約を取り消してください.
ⅱ)キャピラリー電気泳動装置
キャピラリー電気泳動装置の使用については装置担当者にお尋ね下さい.